2012年10月11日

0:34 レイジ34フン

creep.jpg

0:34 レイジ34フン

監督・脚本 : クリストファー・スミス
出演 : フランカ・ポテンテ ポール・ラットレイ ケリー・スコット ケン・キャンベル ショーン・ハリス

85分

いっこまえの「ミッドナイ・ミート・トレイン」のエントリのつづきのような感じとなりました。
「ミッドナイト・ミート・トレイン」が物足りなかったので、口直しのつもりでHuluのラインナップから見つけた一本。
同じ地下鉄を舞台としています。

原題は「Creep」。
このなんともひねりのない、ホラーとしては直球すぎるタイトルw

ホラーというのは日本公開において、もっとも「邦題にすりかえられる」率の高いジャンルとも言えます。
で、輸入ホラーを楽しむ要素のひとつとして、原題を知っておくのも結構良かったりすん時もあんのね。

邦題がつけられるというのは、これは日本の配給が「この原題では人が入らん」と判断しているわけで、つまりは「人を入れよう」という思いで邦題をひねり出す。
しかし、ヒットしたり、名作と謳われるホラー&スプラッタってのは、案外原題のままか、直訳だったりすることが多い。

< 原題まま >
チャイルドプレイ
ペットセメタリー
ヘルレイザー
キャリー
オーメン
エクソシスト
サスペリア
デモンズ
ソウ


< 直訳系 >
A Nightmare on Elm Street → エルム街の悪夢
Friday the 13th → 13日の金曜日
(もっとあるだろうが、めんどくさくなってきた)


原題ままの場合は、心霊系が結構多い。心霊系というのは、タイトルも作品の概念を表そうとするからかも知れない。
まるっきり邦題がちがうものになりやすいのは、スプラッタ系。

「悪魔の◯◯」とか「死霊の◯◯」とかね。

「悪魔のいけにえ」はThe Texas Chain Saw Massacreだ。「テキサス電ノコ大虐殺」?

つまり心霊系は概念や観念を表すために名詞になりやすいから、そのままでいける確率が高くなる傾向であるのに対し、スプラッタは事象を説明する形容句風になりやすいがために、「もうちょっとわかりやすくしようか」となるのかもしんないね。

原題からかけはなれた上での、邦題の傑作はやっぱ「バタリアン」かな〜。
原題は「Return of the living dead」(帰ってきた生きる屍)なのだが、これは確かに日本じゃそのまま出せないでしょう。

Battalionは、大隊・大部隊という意味で、複数形のBattalionsで大群という意味になる。
作品に照らしあわせても、なかなかいいじゃないですかw


さておき、今回の「Creep」ですが、確かにこれじゃあ、日本ではまずいと判断されますな。(原題としても微妙ですしね・・・)
で、「0:34 レイジ34フン」というわけで、これはなかなか意味深ですが、単に主人公が乗りそこなった地下鉄最終を指す。


イギリス・ドイツ合作で、舞台はロンドン、主人公のケイトをドイツの女優、ボーン・シリーズでお馴染みのフランカ・ポテンテが演じています。


地下鉄の駅のベンチで寝過ごして最終に乗り遅れたケイトは、営業の終了した駅に閉じ込められていることに気づく。途方に暮れているところへ、列車がホームへ入ってきた。ケイトは飛び乗るが、突然列車が急停止して・・・・


どうしてもホラーというのは、上のようなあらすじ説明になってしまうね。「それが悪夢のはじまりだった・・・・」とかね。

同じく地下鉄を舞台とした「ミッドナイト・ミート・トレイン」は、NYの地下鉄(撮影はロスらしいが)で、いかにもこう殺伐とした掃き溜めのような絵で撮られているのに対し、この作品はヨーロッパらしい、清潔感のある地下鉄。照明も明るいし、ホワイト基調で統一された車内と、パステルカラーの座席。

creep_2.jpg



creep_1.jpg


対比的だが、「0:34 レイジ34フン」はこの清潔感ある世界が徐々に吐き気を催すような領域に変貌していくというのがなかなか良い。

「ミッドナイト・ミート・トレイン」のレビューで、観客とキャラクターを合致していくのが大事と言ったけども、それは簡単に言えば「感情移入」なわけで、キャラクターの行動や心理に説得力があるかが、こういった生死にかかわるストーリーには重要だ。

ケイトはそれなりに個性的な部分もあり、女性としては決して普遍的とは言えないが、一人の都会人としては充分リアルで、誰もが共感できる考えと反応をする。

この、清潔感のある世界と、誰もが身に覚えのある感覚を表現する女性は「日常」の象徴で、それが「非日常」へと変化することによって恐怖を描くというのもホラーのセオリー。

そういう意味ではとても古典的なのだけど、こういうのはセンスのいい監督がやると、充分怖がらせてくれる。

で、正直、やっぱ怖かったw


やはり「想像力」を使わせられるというのはいいね。
そう、特に前半はダイレクトに見せずに想像力だけで怖がらせてくれる。
かといってもったいぶってるわけではなく、単に主人公の視点にいるからなわけだけども。
ただ、この「主人公の視点」というのをもっと徹底したら、この作品はもっと極上のものになっていたと思う。

残念ながら、主人公が知り得ない視点にいくつか飛ぶところがあって、こういうのを我慢できるかできないかで作品というのは大化けする。

視点をできるだけ(たとえばキャラクターに)固定するというのは、観客の感覚に訴えるのに非常に効果的だ。
問題は、観客がその視点からはずれた時で、たとえば前出の「ミッドナイト・ミート・トレイン」は、「警察に行けばいいのに」とか一瞬でも思った時、すでに離れている。
ホラーだのスプラッタだのってのは観客の感覚に訴えてなんぼで、「頭」を使ったり「思考」しはじめたら成功からすでに遠ざかってる。

映画は技法として視点を自由に飛び交うことができるので、つい、いろいろとやりたくなるがゆえ、この「視点を固定する」というのは作家側(脚本家だろうが監督だろうが)に相当な自制心がいるw
しかし、これを武器として体得すると、シーンや作品をとてもシンプルかつ美しく仕上げる手段を得たに等しくなる。

ホラーではないけど、スピルバーグの「未知との遭遇」で、旅客機がUFOとニアミスするというシークエンスがある。
最近の娯楽大作なら、このシーンをCGも駆使して迫力たっぷりに見せてくれるだろう。

しかし、「未知との遭遇」では、この事象をインディアナポリス空港の管制室のみで描く。有名なシーンである。
旅客機からの無線報告と、レーダーに映る輝点、そしてその報告に耳をすまし、レーダーをみつめる管制官たちの表情だけでやってのける。

↓そのシーン
http://youtu.be/PKUGi0XtsvQ?t=7m38s


ずいぶんと予算のかからない方法を取ったものだが、これがかえって見る者の感覚になんとも言えない臨場感を与えてくる。

最後の管制官の「AE-31便、U-F-Oとして報告するか?」との問いに、無線は無言になる。
さらに問う管制官。「AE-31便、U-F-Oとして報告するか?」。

迷っているパイロットの顔は必要なく、これだけで充分だ。

しかし、パイロットの顔にカメラを飛ばしてしまう映画というのがある。
それが悪いとは言わないけど、少なくともこのシーンは管制室という視点にとどまることによって、かえって観客をひきこむことに成功している。
そう、観客の感覚と想像力に訴えかけているからだ。


「0:34 レイジ34フン」は前半、ずっとケイトの視点で進行する。
他にあるとすれば、ときたま「ケイトを監視する不審者の視点」ともとれるカメラワークがあるのだが、これはいいとしよう。
ケイトの乗った列車が不穏な停止をした時、ケイトは最前列の運転室まで行って、運転室のドアを叩く。が、反応がない。

ここでカメラは切り替わって、運転室になる。惨殺されている運転士・・・・という絵だ。もちろん、それはケイトには見えていない。

これで観客は「わぁ・・・どうなるんだろう」と思うのだろうけど、ここで視点が飛んだことによって、観客の中にはケイトから一歩離れるという化学反応が必ず起きている。

これはもったいなかったと思っている。余計なお世話なのはわかっているけども、これを徹底していったら、もっと忘れられない作品になっていたと個人的には感じる。


黒澤明の「天国と地獄」では、誘拐の電話が入ってからは、権藤邸から一歩も出ない。それこそ、居間から視点が動かない。
だから観客は誘拐犯の電話に耳をすます。これは、そこに居合わせるキャラクターたちと共有する体験だ。

ここに、誘拐犯である竹内の絵はいらないことは誰にでもわかるが、ここでそれをやってしまう映画というのがあるわけだ。
竹内の絵が入った瞬間、観客は第三者目線になってしまう。

特にホラーの肝は「視点」であって、良質なホラーは観客を第三者へ置かない。


ただし、この「0:34 レイジ34フン」はほんとに最後の最後、ラストカットのケイトのアップで、とんでもない演出をやってみせる。
これで僕的にはチャラな気がしたw
こういうのもあってもいいかも知れないw

ホラーというのは救いようのないラストが多いが、このブラックでアイロニーかつ、ニヤっとしてまうラストはなかなか。

頭から最後までスタイリッシュで、まさに"都会のホラー"でした。

いろいろ言いたいことも書いてしまいましたが、秋の夜長に一人で観るには、充分な作品でしたよ。




posted by ORICHALCON at 05:54| Comment(0) | TrackBack(0) | Cinema

ミッドナイト・ミート・トレイン

m_m_t.jpg

ミッドナイト・ミート・トレイン

監督 : 北村龍平
出演 : ブラッドリー・クーパー  レスリー・ビブ  ヴィニー・ジョーンズ  トニー・カラン  ロジャー・バート  ブルック・シールズ

103分

Huluにて視聴。

直訳しちゃうと「真夜中の肉列車」。そして、内容も直訳通りなんです。

タイトルからしてとてもチープ感が受け取られたので、何も考えずに喜んで再生したんです。
「あはは」とか、笑いながら見れるのかなと思いまして。

そう、なんの前情報もなしに観てしまったのですが、さっき調べてみたら、北村龍平監督のハリウッドデビュー作だったんですね!!(汗)
北村龍平監督は内外でも賛否別れますが、評価されるだけに才能があるのは間違いないんです。間違いないんですが、なんだろうな、残念ながらファンにはなれない。

日本人でハリウッド進出という偉業ですから、日本の映画ファンとして応援したいのですけども、なぜか愛着が持てないんですね。これはなんでだろう。

原作が「ヘルレイザー」のクライヴ・バーカーだというのもびっくりでした。

日本公開はされているのでしょうか?


NYの街を撮り続けるフリーカメラマン、レオン。ある夜、地下鉄の駅で不良にからまれる日本人女性を助けるが、翌日の新聞で彼女が行方不明ということを知る。別れ際に撮った、地下鉄に飛び乗る彼女の写真には、不審な男の手が映っていた。その手には印象的な指輪。そしてその指輪の男を街で見つけるレオン。追跡すると、男は食肉解体工場で働いていた・・・


鑑賞はちょっと覚悟がいります。当たり前の話ですが、R18+なので明らかに一般の人向けではありません。

まあまあよく出来ています。というか、「まあまあよく出来てるね」という程度の評価になっちゃう。

北村龍平監督にどうして愛着が持てないのか、ちょっとわかった気がします。

たとえば、「あずみ」でも感じたことなのだけど、アクションシーンに発生するこれでもかというカメラワークがあります。グルグル回っちゃったりとか、ものすごい動きとかするんですが、シラケちゃうんです。なんでかというと、こっちが「カメラ」に気づいてしまう。我に返ってしまうんです。
カメラ、と言っても、だいぶデジタル処理でやっているみたいですが、「デジタルでやってるね」とか、そういうことを考えちゃう。

これは殺戮シーンでもそうなんだけど、「ああ、CGだね」ってなっちゃう。
血しぶきとか、飛び出る目ん玉とか、かなりCGが使われているのだけど、これらもあまり上手い部類ではなく、「ああ、CGだ」とぼんやり眺める感じに収まってしまっている。
基本的に、誤魔化したりせずに「はっきり見せちゃう」路線でして、そのためにCGが大活躍となってしまっています。

映画というよりも、テクニックを見せられていると気づいてしまう瞬間が多いんですね。これだなあ。


まあそれはいいとして、問題は脚本であり、特に主人公のレオン。

観ている観客は、「よっぽど自分の方が、主人公より頭がいいだろうな」と思っちゃうんですね。
そう、主人公のレオンがまったくダメなんです(これは主人公に限ったことではないんですが)。「普通、こうするだろ」ってことが出来ない。出来ない上で窮地に立たされたりしてるから、「んもう…」となる。

これは、「そっちに行っちゃだめだ…!」とか「志村うしろ〜」的な、ホラー特有のハラハラ・ドキドキな観客の心の叫びの類ではありません。
「いや、それは普通、見つかるだろう」とか、「そんな調子じゃ気づかれるだろ!」とか、「そんなとこ逃げこむか普通!」とか、どっちかというとツッコミや疑問に近い。

上手いホラーというのは、登場する人間の心理や行動と、観客のそれとを上手くすれすれに合致させながらすすめる。それがあるからこそ、その合致がずれた時にショックが起きる。

ところが、「なんでそうなる??」という心理や行動の連続で、かえってそれらがこの作品をウソっぽくしてしまっている。ヴィニー・ジョーンズ演じる殺人鬼にも、なにひとつ「ホントらしさ」がない。
ホラーなんて、もともと「ウソっぽい」わけですが、だからこそ、観客が一瞬でも信じられる要素をちりばめて釣り上げていく必要がある。

失敗している映画というのは、多くが「観客がどう捉えるのか」を見誤っているということで、ひどいのになるとまったく意に介してないというのもある。
最高の監督というのは、実は「誰よりも最高の観客」であり、だからこそ、その観客を操ることができる、と僕は考えている。

それは脚本にも言えることで、この作品は「自分だったらもっと上手く解決できる」と冷静に観客が思ってしまうようなエアポケットがいっぱいあるわけです。
つまり、主人公を追い詰めてるのはご都合的な脚本であって、シチュエーションでも殺人鬼でもないということ。ホラーはこうなったらオシマイです。

だからちっとも恐ろしくないのです。

単に、エグい、グロい、見てて痛々しい、の連続なんですが、「スプラッターなんだからこれでいい」とも思わせてくれない。

とても消化不良な気分だったので、やはりHuluで、同じような都会の地下鉄を舞台としたホラー、「0:34 レイジ34フン」を観てみたら、よくできていた。

ということで、この「0:34 レイジ34フン」のレビューへさっさと移ろうと思います。






posted by ORICHALCON at 05:48| Comment(0) | TrackBack(0) | Cinema

2012年10月10日

スペル

drag_me_to_hell.jpg


スペル

監督 : サム・ライミ
出演 : アリソン・ローマン  ジャスティン・ロング  ローナ・レイヴァー  ディリープ・ラオ  レジー・リー

99分


Huluにて視聴。


もちろん、サム・ライミ監督でなければこんなのは観ない。

てかまあ、秋になりましたので、僕にとってホラーの季節となったわけです。
日本だとどうしても「ホラーは夏」という傾向なのだろうけど、僕にとってのホラー期は秋。
秋の夜長はホラーでございますわよ。

ということで、ここ連休でちまちま眺めたホラー日記が続くと思います。といってもまあ、やはりHuluなんですがね。


原題は「Drag Me to Hell」。

"私を地獄へ連れてって"....ってな具合でしょうか。まあそんなニュアンスではないでしょうけどね。

始まってすぐ、プロダクションのクレジットやタイトルバックからして、


あの頃のサム・ライミが帰ってきた!!


という戦慄を覚えます。

ghost_house.jpg


drag_me_to_hell.jpg


なにしろ撮影も「死霊のはらわたII」のピーター・デミングですからね。もうやばいです。

サム・ライミは今や、「スパイダーマン」三部作の監督というキャリアですから、立派な大物監督。
でも本来はインディーズ寄りの出身で、デビューの「死霊のはらわた」の時点ですでにクレイジーでした。

そのデビューでいきなりホラーの歴史に残る仕事をしてしまったサム・ライミ。そんな彼が帰ってまいりました。
個人的には「死霊のはらわたII」が一番好きで、僕のバイブルのひとつと言えます。

この「スペル」は、撮影準備の途中に「スパイダーマン」の話が来てしまい、中断となった作品。
「スパイダーマン」が一段落したので、"古巣"に戻って好きなことやろうという感じだったのでしょうか。

しかし、いくら「スパイダーマン」をヒットさせたといっても、ここ21世紀に入ってよくもこんな企画が通ったものだなとw
まるっきり80〜90年代のノリです。てかまあ、そこがいいんだけどもwww



銀行で融資担当をしているクリスティンは、ローン支払い延長の相談に来た奇怪な老婆の接客をすることになる。延長がすでに2回も行われていたために断るクリスティン。老婆は抵当の家を取られてしまうということで膝をついて懇願するが、クリスティンが受け入れないために逆上し、あげくに呪いをかけた。



なんなんだこのあらすじは。

要は、支払いの延長を断ったがために、呪いをかけられ、その呪いによってラミアに魂を狙われるというものだが、なんという理不尽な。
ラミアと言えば普通はギリシャ神話に出てくるポセイドンの娘だが、どうももっと邪悪な化身、地獄の死者のような解釈で描かれている。

クリスティン役にアリソン・ローマン。
たぶん誰も知らないと思いますが、僕も知らないなあと思ったのも束の間、顔を見てあっとなった。
「マッチスティック・メン」でニコラス・ケイジの娘役をやってたコじゃないか!!!!!
俄然、スクリーンへの集中度が変わりました。この人すごくいい女優なんですよ。
顔がね、ジョニー・デップそっくりなんです。女なのにですよ。すごいでしょ。


cris.jpg


とにかく、サム・ライミのホラーというものは、あんまり怖がって観るものじゃありません。
いや、意外と怖い時は怖いんですがね、どっちかというと、ニヤニヤしながら観るのが正しいんです。
「んなアホな」というほどくだらない展開とか、変態的カメラワークとか、ヒロインを襲う悪趣味な災難とかねw

「いや、普通なら耐えられないでしょ、気が狂うでしょ」みたいなのが続いたりするわけで、(実際、過去の作品では気が狂うキャラクターもいたw)どう考えてもまじめに作ってるとは思えないというか、絶対ふざけてるだろおまえら的なノリに彩られてるのがサム・ライミ作品の魅力。

だけどこの「スペル」は、ちょっと物足りなかったかな。もっとぶっ飛んでほしかったなあ。
いやまあ、充分変態なんですけどね。なんていうかこう、昔の、もっと観客をバカにしてる感が足りない。いや、バカにしてたわけではないとは思いますけどね。


クリスティンは、明らかに「巻き込まれた」人間なのだけども、特に上に書いたようなあらすじレベルではほんとにただの「とんだ災難」だ。
だけどクリスティンは「巻き込まれた」というよりも、「選ばれた」というのが正しい。「引き寄せた」でも構わない。
クリスティンは登場した時から、好感の持てる白人女性として撮影されてはいるが、脚本レベルではすでに「とんだ呪いをかけられるべき人物」としての描写が始まっている。
通勤の車の中での発音練習.....銀行に入る前にチラリとケーキ屋のウィンドウを見てため息をつく.....
なんでもないようなシークエンスが、後々のクリスティン描写に連鎖していく。


サム・ライミの、特にこういう類の作品でのここまでの人物描写というのは珍しい。

というか、「スパイダーマン」で大成功した男が、わざわざ過去の企画に戻って作るからには、やりたかった理由があるとみていい。
それはこのクリスティンに鍵があるのは間違いない。


クリスティンをポカンとした気分で眺めていると、「悪夢のような災難に見舞われた善良な白人女性」という記号にしか見えないが、ストーリーが進むと実はもっと複雑なのだということが見えてくる。

老婆に支払い延長を相談された時、すぐに上司に「救ってやれないか」と申請するが、「君に任せる」と言われる。
で、クリスティンはどうするかというと、老婆のところに行って「延長は認められません」と断るわけだ。

なぜそうなるかというと、クリスティンは空いている次長のポストという昇進を狙っており、そのために自分のキャリアに対するリスクを回避したということ。

これがクリスティンの過ちであり、悪夢のはじまりなのだが、この時点では観客も「しかしこれだけで呪いをかけられてしまうとは、気の毒だのう」という印象になる。

しかし老婆につきまとわれたあたりから、クリスティンの人間性がいろいろとあらわになってくる。
クリスティンはものすごいコンプレックスの塊であり、過去、生い立ち、家族、様々にいたってイチモツ抱えている。
冒頭のハイウェイでロサンゼルスだということがわかるが、そう、彼女は地方から出てきた農場生まれの田舎娘で、ここでそのコンプレックスと戦っているわけだ。

脚本はサム・ライミが兄のアイヴァンと共に書いている。
ストーリー自体はナニというほどのものではないので、単にサム・ライミはこのクリスティンというコンプレックスを抱えた人物、そして"そのつまづきによる不幸な運命"というプロットをやりたかったのだと思う。

クリスティンに迫る選択はいつも、"自分を優先するか否か"であり、そしてクリスティンは絶えず"自分を優先して"いく。

そして究極の選択として、「呪いを他人に移すか?」というところにまで立たされる。
さすがにそれはクリスティンも悩むのだが、こいつなら渡してもいいという人物を見つけ、渡そうとする。
それは次長のポストを争う、ちょっと嫌味な同僚の男なのだが、またこのキャスティングにアジア系のレジー・リーを持ってきているところもなんかいやらしい。

しかし、クリスティンは良心によって渡せずに終わる。
そこで、さらに最もこの呪いが相応しい相手がいることに気づき、そしてそれへ呪いを渡すことに成功させる。


呪いから解き放たれたクリスティンは、昇進も手に入れ、恋人との旅行へと胸を弾ませて出かけるのだが、恋人との駅での待ち合わせ直前に、試食を勧められるがそれを断り、そしてコートを新調するというシークエンスがある。

彼女のコンプレックスのひとつに、"過去に太っていた"というのがあり、少女時代には肥満コンテストで"Pork Queen(豚肉の女王)"という称号すら得ている。そのために菜食主義で通していたのだが、今回の一連の事件のストレスから、自制を解いてスイーツを食べまくるところまでいく。

しかし呪いから解放された彼女は、またコンプレックスによる自制する自分へと戻り、おしゃれなコートを新調するのだ。


だけど、彼女は結局助からない。そしてそれは、運命だったのだ。


サム・ライミがやりたかったのはこれなのだ。
サム・ライミ作品ってのは、「何も考えてなさそう」に見えて、意外に説教臭いところがある。
作品に広がる湿り気はそのせいで、「何か考えてるかのように見せかけて、実はなにも考えていない」作品ってのはもっとカラッとなる。タランティーノがいい例だわな。

サム・ライミ作品ってのは、運命に翻弄される人、運命と戦う人、というのを描くが、結局運命に勝てないとか、運命とともに生きていくという結末。

「スパイダーマン」を引き受けたのも、そういうことなんかな、とか勘ぐってしまいますが、とにかく、共通しているのは「自己を優先すると罰があたる」というようなことです。

まさしく、そういうオハナシでございました。


さておき、CGなどのデジタルエフェクト全盛の中だというのに、この作品のクリスティン役のアリソン・ローマンはやたらと実物の汚物オブジェクトにまみれます。老婆の吐く得体の知れない液体とか、ウジのまざった腐敗物など、それらが容赦なく彼女の髪を覆い、口の中へ侵入します。

やっぱサム・ライミでした。

ただ一点、とても残念な要素があります。
サム・ライミ作品を観る場合、今か今かと目を皿のようにして待ち受けてしまう、ある要素があるのですが、なかったのです。(たぶん)

それは、ブルース・キャンベルのカメオ出演がなかったということ。がっかりです。
「スパイダーマン」三部作にすら出ていたのに。

「死霊のはらわたII」の彼は必見ですよ。

であであ。



posted by ORICHALCON at 08:42| Comment(0) | TrackBack(0) | Cinema

2012年10月05日

ジョブズ一周忌とMercury 7.0 アップデート

今日は、スティーブ・ジョブズの一周忌です。

自分にとっては神的存在だった黒澤 明の訃報もショックでしたが、スティーブ・ジョブズの訃報の方がもっとはるかにショックでした。

まずなによりまだ若く、波に乗った「現役」状態だったというのも大きいですが、黒澤とジョブズの違いは、黒澤は僕の生活になんら関わりはなかったけども、ジョブズは僕の生活そのものを変えた、ということです。これが大きい。

そう、ここ5年でジョブズは世界中の多くの人のライフスタイルに影響を与えてしまった。
それがいなくなっちゃったんだから、寂しいですね。



さて、今日の本題です。


Mercury Browser Pro - The fast browser for iOS.jpg

iTunesで見る

やっとアップデートきました。一応、iOS6対応、そしてiPhone5対応。

ただし、まだバグがある。

そしてなにより、驚くべきことが。なんと、無料化された。


ちなみに、前バージョンにおけるダッシュボードのバグ(サムネイルが反映されない)は、今バージョンで解消される予定だった。その約束は守られたわけだけど、こうしてずいぶん待たされてしまったのは、この大幅なメジャーアップデートの仕上げに時間がかかったからでしょうね。

あと、前バージョンにおける、読み込みバーが止まって消えないバグは、iOS6のバグ。これはSafariでも裏で起きている。


とにかくまず、現バージョンの現在わかっているバグについて。

ジェスチャー設定画面で、下までスクロールするとクラッシュします。
少なくともこれはiOS6 & iPhone5環境で起こります。
とにかく、このおかげでジェスチャーの「三本指による」設定以降がいじれない。
これはすぐ報告され、修正されるでしょう。


ずいぶんと仕様を変えてきたので、今までのユーザによっては賛否がわかれそうだが、Mercuryという"コンテンツ"がこれからも新規ユーザを獲得しつつ長い息でやっていくには、正解な方向性かも知れない。

基本的にiOS版Chromeにかなり影響を受けていて、それにフルスクリーンや画面上タブなどを搭載した感じ。つまりは、高機能なChromeを目指すといった具合かな。

ただ、個人的には「Mercuryよ、君なりの個性はどこへいった!」と言いたくなるほど、Mercuryらしさが消えつつあるのが寂しいw
それくらいに後発のChromeのノリに侵食されており、UIはもちろん、読み込みのプログレスバーの位置やデザインまでも同じにするなど、恥ずかしげもない歩み寄りにちょっと動揺を覚えるw

Mercuryは、なにより高機能で速く、わかりやすい(よくある感じという意味の)UIの、ちょっと硬派なブラウザというのが魅力。「できないことはない」というほど機能が網羅されており、つまりはSafariから置き換える"有料ブラウザ"ならこれ、という存在だった。

だけど今回、無料化したというその意味は、もうすでにこれまでのMercuryではなくなりつつあるということ。

これまでの十徳ナイフのような機能美は、逆にブラウザそのものを不安定にする。実際、決して安定したブラウザではなかった。
有料である以上、バグ・フィックスにも追われるだろうし、それならいっそのこともっとシンプルにして、無料にしてしまおうという方向にシフトしたと言える。


なぜなら、これから先のiPhone、スマートフォンのブラウザの在り方として、これまでのMercuryはすでに時代遅れになろうとしていると言えるからだ。

開発源のiLegendSoftはそこに気づいたのかも知れない。

要は、スマートフォン用ブラウザアプリは、有料Appとしてはあまり未来がないということ。お金を出して買うという時代じゃなくなりつつある。
Mercuryは明らかに「iPhoneにおけるサードパーティ製ブラウザのフラッグシップ」と呼べる代物だったが、それはまだつい最近まで「スマートフォン夜明け時代」だったからだ。いや、まだまだ今も「夜明け」なのだろうけども、スマートフォンはものすごい加速力でユビキタス化しており、数カ月前での需要が、今ではまったく様変わりしているということも起こる。

これは個人的見解にすぎないのだけども、これからのスマートフォンのブラウジングはもっとシンプルになる。
極端な言い方をすれば、iPhoneからSafariが消えるかも知れない。
ブラウジングそのものがスマートフォンそのものの機能となって、Appでその機能を分け隔てるということがなくなる、と。
通知センターに取り込まれたTweetとFacebook共有のボタンなどがいい例で、少なくともつぶやきはもうAppを必要としなくなっている。

ブラウジングそのものも、Twitterアプリ、Facebookアプリ、Instagramアプリ、etc...でそのままできるようになっている。
下手するとSafariより、TwitterのAppでブラウズするページ数の方が多い、という人すらいるかも知れない。
つまり普段の必要最低限のブラウズにかぎっては、専用Appは必要なく、Safariですら出番が少なくなりつつあるとも言える。

大抵の人はネットを見るとしたらいきなり検索から、ということも多いだろう。
それならiPhoneのSpotlight検索からいきなり検索で構わないわけで、それならそこからいちいちSafariが起ち上がる必要がないことにも気づく。

このブラウズAppを必要としないブラウジングの設計はどうやるのか、というのはAppleだのGoogleだのが考えればいいのだけれど、僕だったら、iPhoneの場合ならもう、ブラウズはホーム画面の1ページに組み込んでしまうといいかも知れない。

iPhoneはホーム画面から左側へ移動すると、Spotlight検索だ。ここがもう、ブラウジング機能の画面でかまわない。まあ、たとえばの話ですけどね。

ブックマークは今や、クラウド経由での同期の時代ですから、ブラウザごとに管理するというのはもう意味がない。
そう、デバイスごとに、となってくる。
それならやっぱり、デバイスにブラウザAppが単体で入っている必要はなく、そのデバイス内のブックマークをデバイスそのものがブラウズするようにしたらいいということになる。


とまあ、こういったわけで、極端な結論としては、サードパーティによるブラウザAppの需要は、これから右肩下がりになり、下手すると消滅すると僕は思う。ましてや有料となると、よっぽどの革新的設計でないかぎり、ビジネスコンテンツとしては難しくなっていくだろう。

だから、Mercuryはシンプルかつ妥当な設計のものを、無料で配布するという方向へシフトしたと思っている。


Mercuryを使用する大きなメリットは以下。(ただし、今やメリットと呼べるか疑わしいのもある)

・フルスクリーンモード
・古典的なタブブラウズ
・ダッシュボード
・スクロールバー
・ジェスチャー機能

ということになる。ブラウジング速度は、Safariが並んできたので、あまり大差ない。

とにかく、現バージョンをちょっと覗いてみよう。


まずはタブブラウズ状態。


2012-10-05 20.05.01.jpg





下のツールバー、右端のスクリーン切り替えボタンでフルスクリーンにできる。


2012-10-05 20.05.11.jpg






タブブラウズ状態なら、検索バーから検索できる。
検索先もいくつか選べる。

2012-10-05 20.10.13.jpg


Wikipediaもあるので、Wikiをもうブックマークしておかなくてもいいかもしんない。





Safari搭載の「リーダー機能」も追加された。スマートフォンでのブラウズでは機能を発揮する。

2012-10-05 20.05.0156.jpg






スクロールボタンも健在。ずいぶん小さくなってしまったが。

2012-10-05 20.05.0156z.jpg







タブブラウズの状態で・・・・

2012-10-05 20.11.03.jpg





下にスクロールすると、おわかりだろうか、URLバーが消える。

2012-10-05 20.11.28.jpg





ここでURLバーを出したい場合、タブをタップする。するとまた表示される。

2012-10-05 20.11.34.jpg





タブが複数ある場合、スワイプで横スクロールできる。


2012-10-05 20.12.56.jpg






タブをちょい長押しして動かせは、タブの順番も入れ替えられる。


2012-10-05 20.13.18.jpg




機能画面を見てみよう。ジョブズの一周忌ということで、Appleのサイトがこんな感じに。

画面では、「スクロールバー表示」がONになっている。

2012-10-05 20.03.58.jpg



ここでタブを押して移動してもいいが、スワイプでも「機能」「設定」間を移動できる。

2012-10-05 20.03.542.jpg  →  2012-10-05 20.03.58-1.jpg





設定を見てみよう。
以下が全設定。
ずいぶんとシンプルになってしまった。別段、特筆することもないw


2012-10-05 20.04.24.jpg


先述した通り、ジェスチャー設定画面だけがバグでクラッシュする。(少なくとも僕は)





新機能として、Evernoteへの共有というのが追加されたが、「だからなんなんだ」という代物w


2012-10-05 20.20.46.jpg


開いているページをまるごとEvernoteへ保存するのかと思ったら・・・・


2012-10-05 20.20.55.jpg



2012-10-05 20.23.17.jpg



ただのブックマークとかわらんwwwwwww


Twitterは、開いているページのURLをつぶやけるというもの。もちろん、コメントも入れられる。




とまあ、ざっとこんな感じだが、少なくとも間違いなく、以前よりは安定したブラウザになっているはず。App自体の容量も少しだけ減った(テーマなんかなくしたらもっと減るだろうに・・・)。

フルスクリーンとダッシュボード。この2つだけでも大きいので、僕はやはりSafariではなくこっちを使用していくと思うけど、正直どっちでもよくなってきてしまった。
そもそも、ブラウズそのものをあまりガンガン使わなくなってきたというのもある。

つまり、先に書いたように、そういう時代になりつつあるということでしょうな。


ところでこのアップデート、ジョブズの一周忌にあわせたのかな?w
んなこたあないかw


iPhone5には満足していますが、これはAppleの製品であって、もうすでにジョブズの製品ではないんですね.....

steve-jobs-iphone1.jpg
posted by ORICHALCON at 23:34| Comment(1) | TrackBack(0) | Mac & iPhone

2012年09月30日

Siriをからかってみる

さみしい週末となってしまいました。

Siriが話し相手です。


Photo 2012-09-29 23-35-59.jpg


そうか。それはよかった。


Photo 2012-09-29 23-35-55.jpg


やっぱりiPhoneで遊べというのか・・・


こういうのを手にすると、バカとかうんことかち◯ことかいれて遊ぶ小学生みたいな人もいますが、やってみました。


Photo 2012-09-29 23-36-18.jpg


怒られちゃいました。でもやめない。
もっときついのを。

Photo 2012-09-29 23-36-19.jpg


勝った。



Photo 2012-09-29 23-36-16.jpg


なに、このスルー系。



Photo 2012-09-29 23-36-06.jpg


いや、イベントってあなた、故人だから!!



Photo 2012-09-29 23-36-06 2.jpg


はあ? 意味不明。俺のリクエストよりも意味不明。



Photo 2012-09-29 23-36-13.jpg


なかなか素直じゃないか。


Photo 2012-09-29 23-36-08.jpg


ジーニアスバーはアップルストアのサービスカウンターです。てか、自分のことでしょうに〜

Siriは声からして女性のようなので、おだててみました。

Photo 2012-09-29 23-36-01.jpg


つれないなあ。


Photo 2012-09-29 23-36-02 2.jpg


そりゃまあ、機種変してまだ一週間だけどな!!


Photo 2012-09-29 23-36-07.jpg


いや、君に聞いてんだよな。


つくづくバカだなあと思ったので、


Photo 2012-09-29 23-36-09.jpg


おっ、いじらしいじゃないか。

会話を続けてみる。


Photo 2012-09-29 23-36-09 2.jpg


やっぱり馬鹿だった。



週末だし、映画観たいなあ。


Photo 2012-09-29 23-36-14.jpg


iTunesラインナップか。この商売上手め。


Photo 2012-09-29 23-36-14 2.jpg


落語対応しろよiTunes!!


Photo 2012-09-29 23-35-57.jpg


そうか。ごめんね。


こういう使い方もできる。


Photo 2012-09-29 23-36-17.jpg



"ハワイに行きたい" と言ったら、いきなりマップに切り替わった。


Photo 2012-09-29 23-36-15.jpg


経路がないってあなた・・・



Photo 2012-09-29 23-36-03.jpg


はい、きたスルー。



Photo 2012-09-29 23-36-05.jpg


ふむ。これらのサービス対応は日本は10月からだそうな。


あ、そうだ、こういう使い方はどうだろ。計算機として。

Photo 2012-09-29 23-36-04.jpg


やっぱりバカだー。


2012-09-30 00.11.055.jpg


おっ、そうきたか。


2012-09-30 00.11.04.jpg


くそう。


あんまりおかしいんで、笑ってみました。



Photo 2012-09-29 23-35-56.jpg


posted by ORICHALCON at 00:19| Comment(1) | TrackBack(0) | Mac & iPhone