2012年07月27日

カルメン故郷に帰る

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カルメン故郷に帰る

監督・脚本 : 木下恵介
出演 : 高峰秀子 小林トシ子 望月優子 佐田啓二 笠智衆


こんな記事が目にとまった。

木下恵介監督『カルメン故郷に帰る』がベネチア新部門の初上映作品に!カンヌに続く快挙


木下恵介作品は観たことがない。というか現代において、これだけその作品を観る機会に恵まれていない巨匠もなかなかない。
どこかで、なにかしらのかたちでひとつくらい観たことがあるのかも知れないが、まったく記憶にないので、観たことにはならないに等しい。


で、この「カルメン故郷に帰る」がHuluにあったので、さっそく観てみた。

松竹三十周年記念作品。そして、日本初のカラー作品です。1951年公開。
「総天然色」という感じで、やや赤みがかった強い発色。この当時のカラー撮影は光量を必要とするため、全編ほとんど屋外での撮影になったらしい。(屋内のシーンがないわけではない)
舞台が北軽井沢になっているのも、光量を得るためだったという。また、カラー現像がうまくいかなかった場合に備えて、モノクロ撮影もするという「二度撮り」を行なっている。大変ですねえ.....


ストリッパーの"リリィ・カルメン"こと、おきんが、ストリッパー仲間の朱美を連れて生まれ故郷の浅間山麓に帰ってくる。家出同然で飛び出していたため、迎える父もぎこちない。しかし天真爛漫なカルメンは意にも介せず、自然に囲まれた村を我が物顔で練り歩く。そんな東京からやってきた華やかな女二人に、目を丸くする人々。ある学校の運動会を台無しにしてしまった穴埋めに、カルメンたちはダンス・ショーを披露することになる。まさかストリップだとは思わない人々が観に集まるが・・・


面白いのは、カルメンは自分がストリッパーだということを隠しているわけでもなく、恥じてもおらず、むしろ「アーティスト」として誇りに思っているところだ。だから故郷の人間も「ダンサーとして成功して帰ってきた」と思い込む。


さておき、カンヌで好評だったのかも知れないけど、正直、僕は生理的に合わなかったような気がする。しかも困ったことに、その理由や原因があまりわからない。

全体的に興味が持続しなかったのだ。ちょっとそんな自分にショックでもある。なにか面白い点はないかと探しながら観たのだけど、気になるのはその画角、とかそういう、どうでもいい点だった。


人間の全身が映り込むという、いわゆる「サザエさん」の画角が基本デフォルト。

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この画角がほとんどを占め、ワンシーンがワンカット構成、この画角だけで終わることも多い。

もちろん、バストショットなどもあることにはある。

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顔のアップなどはほとんど皆無に近く、少なくともあまり記憶にない。

全体的に、「人を撮る」というよりも、「背景があり、そこに人を置く」という目線で、なにかこう俯瞰的、観察者的な視点が常に支配している。そして、その手法の目的がまだ僕には発見できていない。

有名な他の木下作品、「二十四の瞳」や「楢山節考」などもこういう感じなのだろうか。もしくは、この作品にかぎってなのだろうか。

先の記事ではこの作品、コメディと紹介されていたが、Huluでもコメディに分類されている。だからそのつもりで観たのだが、一度も笑うことはなかった。クスッともなかった。なぜだ。


木下監督はいろいろな題材を撮ってきた人、という印象があるのだけれど、この「カルメン故郷に帰る」に関しては「冒頭からいきなり引き込まれない」映画という印象になってしまった。
どういう生真面目さなのかはわからないが、すべてにおいて丁寧なお膳立てを用意してから展開するという脚本構成になっていて、1時間20分という短めの尺でありながら、「もっと短縮できるのでは」と思ってしまう。

主演の高峰秀子は大いに観る価値があるが、しかし木下監督は自らこの女性を創りだしておきながら(監督が脚本を書いている)、彼女にはあまり興味がないようにみえるし、愛情らしいものも感じない。

なにか不思議なものを見せ続けられている感じだった。

ほんとなら、初の木下作品ということで、「いやあ、なかなかどうして面白かったですよ!」みたいなエントリが書けると勝手に期待していたので、この結果にちょっと動揺している。

なにか見落としているのだろうか。


この約3年後ぐらいに、「七人の侍」が誕生する。それで長老役をやっていた高堂国典さんが、裸で踊るカルメンをポカンと見上げるカットばっかりが印象に残っているw


いい映画というのは、印象に残るセリフが必ずあったりする。しかしこの作品は、「セリフはどうでもいい」といわんばかりにサラサラと流れていく。
また、古い作品なので、何を言っているのかわかりづらかったりするのだが、これは仕方ないので全然かまわない。ただ一番まいったのが、セリフの音声が映像とずれていたのである。これはHuluの問題なのか、オリジナルがそうなのかはわからない。けどこれでずいぶんと集中力をそがれてしまった。


もう一回観てみようと思います。


posted by ORICHALCON at 04:03| Comment(0) | TrackBack(1) | Cinema
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カルメン故郷に帰る (デジタル・リマスター)
Excerpt: 木下恵介監督、日本初のカラー作品だったそうですね。 デジタル・リマスターされて、ものすごくキレイ! …戦後数年の浅間山麓の、のどかな田舎。なんか、当時の独特の生真面目さや明るさ、素朴さ、みたいな..
Weblog: のほほん便り
Tracked: 2014-07-09 09:24