2012年07月19日

日本映画も大変なんです

今日は長いですよ。ご注意。(あ、いつもか)

ずいぶん遠ざかっていたmixiなんですが、メッセージが届いていたために久しぶりにアクセスしました。

んで、mixiで自分の入っている「映画愛好会」というコミュがあるんですが、そこにこんなトピが。


邦画があまりにお粗末(ク〇=〇ソ)過ぎて、邦画(邦画作る人)ってやる気あるんでしょうか?


どうも、邦画って
@監督の自己陶酔系
Aセンスの押し売り
Bテレビがただ映画館に

このどれかに該当する感じがします

今の邦画ってどうなってるんですか??
やる気あるんですか?
業界通の方教えて下さい




ネット内のものと言えど、mixi、さらにその中のコミュニティという限定されたものだから、内容については以上にとどめておきます。

ともあれ面白いね。いいトピだね。タイトルが過激なとこも良いw
で、300件くらい書き込みがあって、またこれがやや荒れ気味なときもあったりすんだけど、トピ主さんもアグレッシブな人で納得いかない書き込みには遠慮なく噛み付くのねw
そんなトピ主に対してまた批判する人もいたりすんのだけど、こういうのはおとなしくなりすぎてもつまらないしね。ただ、どこに向かっているのかはみんなはっきりしてないとどんどん横道にいっちゃう。

「日本映画アカデミー賞ってどうなんだ」って話にまでなってる。たしかにあれもなにかこう、映画ファンにとってあまりグッとくるものじゃないですからね。


さておき、僕は業界通でもないし、またそのトピに書き込みまでしてmixiへのアクセスで行き来もあまりしたくないので、黙ってはいるんですが、言いたいことはいっぱいあります。それならあそこのトピよりも、せっかくのこのブログのネタにした方がいいんじゃないかとも思ったので、今日はこれをテーマに書きます。



まあ、この「邦画だめだねえ」はいつ頃からか日本の映画好きの間では永遠のテーマで、時にはとても盛り上がります。

「映画愛好会」というコミュに入るからには、映画というコンテンツに対していろいろと、多かれ少なかれ思い入れや愛着があると思うのですが、そういう人達がああやって「どうしたら日本映画は元気になれるのか」みたいなやりとりは大いにやるべきですよね。まず誰かが言ったり考えたりしなくっちゃはじまらないんだから。
あのコミュにいる人が将来日本の映画業界に身を置くことだってあり得る。もう置いてる人もいるかもとも思いますけど。



「邦画が全体的にダメ」ってのは、これ、大体の人は「なんとなく」同意できるものです。
「いいものもありますよ」と言う人もいて、そして確かにそうなんだけども、でも、そこはかとない「ダメ感」は「まあ、たしかにね」とある程度理解いただけるものでしょう。

トピ内では、洋画が対比にされていることが多いのですが、洋画に関して言いますと世界まるごとだとあれなんで、ここではわかりやすくアメリカを例に話しましょう。

アメリカでは、年間約500〜700本が商業用として製作されています。
で、「クソ」といったら、大体そのうちの半分以上は「ひどい」ものばかりなんですよ。半分どころか、もっと多いと感じる人もいるかも知れません(こういうのは主観ですからねぇ)。たとえば劇場用に慣れてると、Vシネみたいなのは見劣りしますが、まさにそのVシネみたいなのがいっぱい製作されています。
スティーヴン・セガール作品とか「物足りない」と言う人いますけど、それを言ったらあれでもまだマシで、「だまされた」レベルのすらあるわけです。

さすがに日本の配給はそんなの買いませんから、僕らは知りもしないわけです。成功した(もしくは成功が見込まれる)作品という、ほんとにピラミッドのてっぺん、氷山の一角が輸入されているにすぎません。

つまり僕らは「アメリカの作品でもかなり本気のやつ」ばかりを知ることになる。
アメリカだけでもこうなわけですから、こうなると日本人の視点から見て「ダメな印象の邦画全体」と「いいとこどりの洋画」という対比は、邦画にとって不利かも知れません。


でもこれ言っちゃうとおしまいなので、じゃあ、そのいいとこどり同士でも考えた場合、邦画はどうなのか、ということになった時に、たとえば「日本アカデミー賞ってどうなの」と考える人もいるでしょう。トピが実際そういう方向になっています。

日アカについては、トピでもいろいろ書かれてましたが、「邦画全体のダメ感」と日アカはあまり関係性を僕は感じていません。これはたとえばアメリカ映画産業とオスカーに関してもそうです。

その証拠に、こういう映画産業やその作品の質などの話をする時、「賞や、映画表彰式典」のことを持ち出すと、かえって収拾つかなくなることがあります。日アカだろうとオスカーだろうと、単なる主観の統計や、業界のお約束事の結果なので、今日の僕は言いたいこともあるけれどもちょっとこれについては触れずにおいておきます。


で、アメリカで年間500〜600本と言いましたが、対して邦画は大体300〜400前後で、世界的に見るとかなりの映画製作大国です。
「そんなに作ってるっけ?」と感じる人もいるかもですが、それは、まともな宣伝費をかけられる作品はせいぜい100いきませんので、それ以外は誰も知らないのです。


この宣伝費について、日本映画業界をさらにダメにしてしまっているシステムがあるのですが、それはあとで書きます。


まずなぜ「邦画はダメっぽい」のか、それは邦画に限らず、「ダメっぽい映画」というのは「プロデューサーがダメ」だということです。

実は僕らが考えてるほど、監督は映画という事業の重要要素ではありません。いや、もちろん大事です。これ以上ない生命線なんですが、その生命線をも握ってるのがプロデューサーです。
映画製作のプロジェクトというのは、プロデューサーにはじまってプロデューサーに終わります。企業で言えば、プロデューサーは創業者・社長であって、監督は撮影・編集における最終決定権を一時的に与えられた現場監督にあたります。
つまり年間何本映画が作られるか、というのは、年間何人のプロデューサーがどのくらい活動しているか、ということになります。

どんなにすごい監督でも、それを発掘するのはプロデューサーの仕事です。作品に恵まれない監督というのは、イコール、プロデューサーに恵まれない、ということになります。
コッポラや黒澤がたとえどんなにすごかったにしても、彼らをすごい人にしたプロデューサーが必ずいるわけです。
ひどい映画を観たとき、僕らは「この監督だめだな」と思ったりしますが、ほんとにダメなのはプロデューサーだと思ってもいいわけです。

で、製作本数の多い国(日本もそのひとつですが)というのは、メジャー製作会社やスタジオに属さない「独立系プロデューサー」が多い傾向があるとも言えます。その多くは野心家です。


ただ、海外と日本の風潮の違いは、このプロデューサーの存在が重要視されていない、という点です。


いくら映画好きでも、プロデューサーの仕事のすべてを理解している人は少ないでしょう。想像を絶するものがあり、映画の「え」の字、芸術の「げ」の字もないような仕事も山積みです。そして、それらすべてをきちんと教えてくれる環境がない、もしくは遅れているというのが日本の特徴です。

プロデューサーが育つ環境がないのです。といいますか、育てる余裕がないのです。

これじゃいかんということで、かつては、アスミック・エースや角川、東北大学でプロデューサー養成ワークショップみたいなのもありましたし(僕はこれに参加したことがあります)、日本映画エンジェル大賞などもありました。
シナリオ大賞とか短編映画大賞みたいなのはありますが、このエンジェル大賞はプロ・アマ・インデペンデントを問わず、プロデューサーを対象とし、そのプレゼンを審査することによって企画開発力・企画実現力などに対して賞を決めるというもので、大賞は企画準備金として投資を受けられます。(これが「エンジェル(投資家)」という意味になっています)

これで実現した作品もいくつかあるのですが、大賞の中でも期待されていた「ミッドナイトイーグル」は、結局大賞を受賞した人ではないところへ企画が流れてしまい、なにかこう、突き抜けない、毒にも薬にもならないものなってしまった、というハナシもあります。


しかし、エンジェル大賞も長続きしていませんし、日本のプロデューサーの卵にとってはまだ冬がつづいています。

たとえばちょっと昔の話になってしまいますが、日本で有名なプロデューサーの一人、奥山和由さん。この人は見る人によって功罪わかれると思うんですが、北野 武はこの人いなかったらまず映画撮ってなかったでしょう。

プロデューサーというのはいろいろ失敗するもんなんですが、日本映画界はこの人の育成に失敗してしまいました。松竹はこの人を親子そろって追い出しちゃったりしたでしょう。奥山氏はこれで一気に失脚します。もちろん、今もがんばってらっしゃいますけど。ともかく、バブルということもあったかもですが、海外にコネを持つまでになるプロデューサーなんて、日本じゃまずなかなか発生しませんから、どんな理由があるにせよ、こういう人は手綱にぎって育てないと。明らかにあれは松竹の、いわば日本映画産業の保身的姿勢の表れだなとも思います。


で、この「プロデューサー」と「その仕事内容」に目を向けるということは、映画を「ビジネスコンテンツ」としてきちんと捉えるということになってきます。


世界的に見て驚く事実のひとつに、「日本の銀行は映画製作に融資しない」というのがあります。
かつて、外資映画に融資した少ない例や、みずほの映画ファンドなんてのもありますが、基本的に銀行が映画製作に貸し出しするというのは皆無です。萩原健一が「竜馬を斬った男」の製作費のために銀行に借金したと聞いて(製作費の一部とは思いますが)、へえ、と思ったりしましたが、それくらいのバジェットになると、まず銀行は見向きもしません。

これはもちろん、「映画はリスクがでかすぎる」ということなんでしょうが、別の見方をすれば、「日本映画産業は、産業として認められていない」証拠ということになります。

そしてやっぱりその原因は、回収の成功率が低いからなんですが、回収するのはプロデューサーの仕事です。というか、これのためにいると言っても過言ではありません。プロデューサーのゴール、最終到達地点です。


つまり極端に言えば、プロデューサーの向上は、産業としての向上ということにもなります。


しかし、この回収の成功という意味では、映画産業に革命的なことが起こりました。

テレビ局の介入です。先述した「宣伝費の問題システム」の件がこれになります。

映画というのは、面白いくらい「宣伝費」と「回収率」が比例します。でもこれは映画に限らないことは誰にでもわかるでしょう。
宮崎アニメがいくらヒットしたと言っても、その裏では徳間書店が目の飛び出るような宣伝費を投下しているわけです。

回収が振るわなかったプロデューサーの次の作品は、質の低下を招きます。なぜかは考えてみれば一目瞭然です。回収できないプロデューサーにはもう、誰もなかなか投資しないからです。
で、そのプロデューサーが手がける作品のバジェットがどんどん下がり、保守的なビジネスとなっていきます。

で、回収に欠かせない命綱、宣伝費ですが、これで一番お高いのがTVスポットです。数億くらい平気で飛びます。そのかわり、効果は絶大です。
TVスポットが打てる製作プロジェクトというのは、ほんの一握りで、日本だったら全体の80%以上は「TVでの宣伝なんてとんでもない」という状態です。日本では制作費3億で大作、5億越えなら超大作みたいな風潮ですから、そこからまた宣伝費なんて大変です。

単館レベルの作品でもたまに「絶賛上映中!」とTVで見たりしますが、それはよほど口コミなどで人が入った幸運な例で、上映前に打てていたわけではありません。TVスポットを打てるところまで人が入ったということで、ここで弾みをつけようという勝負に出ているようなものです。

で、TV局の介入というのは、製作にTV局が加わることによって、このTVスポット代がタダ同然みたいになるということです。これがどんなにでかいことか、おわかりになるでしょう。

TV局製作の作品といえば、「踊る大捜査線(劇場版)」がパイオニアです。

たとえ「踊る大捜査線(劇場版)」を観たことない人でも、僕らのほとんどの人があの青島刑事の「事件は会議室で起こってるんじゃない!」という場面を知っていますね。これだけでも、どれだけTVスポットが打たれまくったかがわかりますし、またその認知効果が絶大かということもよくわかります。
とにかくフジは、ことあるごとにあのスポットを流しました。

あれだけの量のTVスポットを打つなんてことは、普通の日本の映画製作では不可能です。
しかしTV局はいくらでもできる。しかも、そのスポット枠を独占できる。つまり、同時期に上映される競合作品のスポットは受注しない(放送しない)、という戦法も取れるのです。で、実際、そうなったわけで、これは関係者から問題視されました。

これによって、回収リスクが激減し、また実際に回収したので、今ではTV局が製作委員会に名を連ねることは珍しくなくなってきました。


そんなの、TV局の噛んだ映画の一人勝ちじゃないか、と思う人もいると思いますが、実際にそのとおりで、実はこの「映画製作にTV局が介入する」ということは、アメリカなどでは独占禁止法で禁止されています。なぜなら、上に書いたようなことが起こるからですが。


つまり、禁じ手なわけですが、それによって特に独立プロや、そのプロデューサーたちはますます勝ち目がなく、活躍が制限されているというわけなんです。


「でもさ、その禁じ手で市場を独占しているTV局介入作品や、大手製作会社のメジャー作品ですら、どれも満足のいくものとは言えないじゃんね?」 と疑問を呈する人もいるでしょう。

回収しているということは、喜んで観ている人もいるわけで、ああいったものに不満を感じる人というのは、単に「製作側のターゲットになっていない人」だったりすることが多いのですが、まあそれはおいといても、質が向上しているかといえば、そうではないと僕も感じています。


原因はいろいろあって、挙げればキリがないんですが、大きな原因のひとつに、日本特有のブロック・ブッキング・システムというのがあります。これは映画通の人なら、知っている人もいるでしょう。
これはよく「悪習」と言われたりもするのですが、日本の配給メカニズムは、このブロック・ブッキング・システムに支配された領域があります。

特に大手(東宝系・東映系)のはじめとする全国の封切り館は、ほとんどがこのブロック・ブッキング・システムです。これはなにかというと、簡単に言えば約一年先までの上映スケジュールが組まれているということで、それは作品の内容まで決まっています。

これは劇場にとってもヘンなシステムで、どんなに人が入っても、上映期間を過ぎたらスケジュールにそって次の作品を掛けなきゃならず、ロングランができません。また逆にどんなに人が入らなくても上映期間中は掛けなきゃなりません。

普通、配給・上映というのはフリー・ブッキングなわけで、配給がその都度、劇場を押さえなきゃなりません。そして劇場側も、掛ける作品を選ぶことができます。シネコンというのは基本、フリー・ブッキング制です。

なのになぜこんなことするかというと、このやり方だとチケットの販売や宣伝がしやすく、また配給が劇場を押さえるのに苦労しなくてすむ、というのがあります。

しかし、このシステムの一番のデメリットは、「スケジュールを埋めるための作品を作り続けなくてはならない」というのがあります。作り続けないと穴が空いてしまうわけです。

つまり、プロデューサーなどが「これでいこう!」と作りたい作品を手がけるというよりか、「なんか作らないとまずい。おい、なんかないか」ということになります。

この例ひとつとっても、邦画全体の質が上がっていくわけがない、とは思いませんか。

プロデューサーなんてのは大変ですから、好きでないと務まりません。
彼らがなんでそんな地獄みたいなとこへ首突っ込むのかというと、それはやっぱり映画は「夢」があるからです。これなしでどうしてできましょうか。そしてその「夢」と「ビジネス」を成立させなければなりません。

でもいくらビジネスといっても、「やりたくもない」作品では情熱がわきません。

海外でも評価された、「おくりびと」という作品がありますが、あれは本木雅弘がプロデュース的作業もしています。本木さんが原作を読んで、「これを映画化したい」と思い、行動をはじめてから実現まで12年。相当大変だったと聞いています。

この作品、国内外含め、受賞した内容もすごいものがありますが、やっぱり良い作品というのは必ず作り手の情熱がありますよね。これは工業製品ですらそうです。


この情熱を活かすことができなくっているという悪循環が、邦画界の一番の痛手なんではないでしょうか。

しかしこう言うと、「でも情熱をかけて作れてる人だっているだろう。だけど、そういうのに限ってひとりよがり」という意見も出てきますでしょう。
でもそんなのはどこの世界だってそうなのです。音楽だろうが演劇だろうが、そういうのはたくさんあります。
でもそこで采配をとるのがプロデューサーであるわけで、いい脚本を開発し、いい監督を選択してどのようにやらせるか、ということになります。「情熱」をどう開花させるか、なわけです。

だから僕ら映画ファンがもし、邦画の明日を憂いるなら、もっとこの根源的な立場にあるプロデューサーというものにも目を向けてみて、時にはリスペクトし、時にはものも言い、応援するという土壌が育まれるというのもあっていいかなと思います。
ファンが映画を育てる、という言葉があるなら、まさにこの角度は必要だと感じています。


つか、長くなりすぎましたし、なんかラーメンが無性に食べたくなってもきましたので、今日はこのへんで。



posted by ORICHALCON at 09:09| Comment(2) | TrackBack(0) | Cinema
この記事へのコメント
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