2012年07月07日

プレシャス

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プレシャス

監督 : リー・ダニエルズ
出演 : ガボレイ・シディベ モニーク ポーラ・パットン マライア・キャリー レニー・クラヴィッツ


上の画像は、Huluで使用されているタイプのもの。いわば、日本のマーケティング用だろう。

海外仕様はというと、これらがある。(以下はクリックで拡大表示できる)


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だいぶ趣きが違うのがおわかりだろうと思う。
日本仕様はなんかこう、心あたたまる感動ストーリー!!って感じで、「プレシャス」のタイトルのロゴといったらあなた.....キラキラしてます。


ところがどっこい。フタを開けてみるとR15+指定(15歳未満閲覧禁止)作品でござい。


サンダンスでグランプリを取ったということで、公開当時ちょっと気になっていた映画だった。
紹介されていたあらすじがまたちょっと強烈でもあった。


プレシャスはハーレムに住む16歳の黒人少女。自分の容姿に強い劣等感を持ち、実際、学校でも虐められ、誰からも愛されないと思っている。家庭では両親からの虐待の毎日。その上プレシャスは妊娠しており(しかも二人目)、それは父親から受けているレイプの結果である。


映画がはじまってから終わるまで、日本仕様のようなキラキラなムードは一切無く、そこはかとなく痛々しい空気が蔓延している。
かといって暗いとか、救いようのない映画というわけではなく、プレシャスも意外にもタフなので観客もついていくことができる。

サンダンスで評価されるくらいなので、確かにメジャー路線ではなく、演出や構成も個性的。(ただ、珍しいとか新しいという意味ではない)


プレシャス役のガボレイ・シディベはオーディションで選抜され、実質これがデビューらしいのだが、あまりにも存在そのものがリアルすぎですごい。彼女なしでは創れない映画・・・というのは言いすぎかもだが、ドキュメンタリかと錯覚しそうになるほど彼女はリアルだった(また、それっぽい手法も使っている)

この映画のリアリティが増しすぎて、観客が重苦しくならないクッション素材が用意されている。まわりのキャストだ。
マライア・キャリーやレニー・クラビッツが出てきたりする。マライアは重要な役なのだが、スッピンなために事前に出演していると知っていないと、気づかない観客もいるんじゃないかな。

教師役のポーラ・パットンは、最近「デジャヴ」で観たばかりだったので、あの口角のあがった口ですぐ思い出した。セクシーな女優で、目でモノを語れる感じがいい。

問題は母親役のモニークだ。やばすぎる。結局この映画をグランプリに押し上げたのは彼女の功績がでかいだろうと思う。
オスカー取ってもおかしくない仕事をしているので、彼女と、彼女が締めくくるラストは必見です。

この映画は、なにより俳優を観る映画、と言ってもいいと思う。

とにかく、プレシャスのような境遇であれば、死にたくなるかよほどまいってしまうかなのだが(「死にたいと思うことがある」とはプレシャスも語るが)、プレシャスは黙って生きていく。
なんだか大津市のいじめによる自殺の件で最近ネットが騒がしいようだけど、若いうちからひどい仕打ちを受けており、そしてまわりからなんらかの救済が望めない場合、耐えられる子と耐えられない子の差はなにかというと、その仕打ちに対する自分なりの処方箋をもってるかどうかにかかっている。

そしてその処方箋の多くは、「感覚を麻痺させる」という方向性を持つ。追い詰められると、そうなる。
その一番わかりやすい方法例が、この作品で示されている。「空想」の世界に身をおくのだ。
プレシャスはなにかとあると、スターになって歌ったり踊ったりする自分、イケメンのカレシとイチャつく自分、そういったイメージを思い描く。(またこれがサマになっていたりするw)

たとえウソな内容でも、ポジティブな想像力が枯渇した時が、人間一番やばいというか、弱くなるんだなとは思う。

人間関係の不和の原因は、つきつめていくとほぼ100%、「コミュニケーション不足」だということがわかる。
言い換えれば人間関係の不和を解決できるのは、「さらなるコミュニケーション」ということになる。コミュニケーションを取るとなにが起こるかというと、「相互理解」であって、「理解」は想像力を母体エンジンとしている。

プレシャスの"プレシャス"は、想像力なのかも知れない。


ただ、もったいないことに、この映画はキャラクターに肉薄しすぎて、観客の想像力を刺激するところまでには至っていない。
「映画的」かというとそうではなく、なにか「記録的」な印象だ。そのかわり、残酷なほど「観客に媚びる」ことをしない。


万人におすすめする映画ではないのだけど、「愛」ってなんなんだろうなとあらためて悩みたい人にはおすすめです。


話が戻るけど、日本仕様のパッケージは詐欺だと思う。こういう恥ずかしいやり方をいつまでやるつもりだろう。
このパッケージから受ける印象を望む人が観る映画じゃないため、Huluにおける視聴者評価が下がっているという状態に陥っている。

こういうやり方こそまさに、「想像力の欠如」のなせる業だと思うんです。

タグ:プレシャス
posted by ORICHALCON at 22:34| Comment(1) | TrackBack(0) | Cinema
この記事へのコメント
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Posted by コピーブランド at 2014年06月04日 15:25
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