
「ダークナイト」から惚れこんでいる、クリストファー・ノーラン監督の最新作です。
新宿ピカデリーも、新しくなってからは初乗り込み。

全体的に白基調でとても奇麗なのですが、あまりくつろげる設計にはなっていません。

ここはメインロビーで、劇場は別の階に振り分けられており、エレベーターかエスカレーターで行かねばなりません。
「インセプション」を上映のCinema 7は11階という....;
実は一度、観たい回の「インセプション」のチケットが売り切れで、無駄足を踏んだことがあったので、今回はオンラインでチケットを押さえておきました。
これは便利ですね〜。

さて、「インセプション」なのですが、僕の期待が大きすぎたのか、残念ながらさほど印象に残らなかったんですね。
他人の夢の中へ潜入し、その頭の中の「アイデア(考え)」を盗む、という犯罪組織の話で、その作戦の中でも最も難しいとされる、「アイデアのインセプション(植え込み)」という依頼を受けたディカプリオが他人の夢の中で奮闘する.....といった感じなのですが、その設定とアイデアが先行しすぎてしまっている感があります。
「ダークナイト」が、描いているテーマと、登場人物たちがあまりにも強力だったので、それに比べるとちょっとパンチ力に欠けてしまうのは否めません。
というか、一度傑作なるものを作ってしまった監督となると、次回作へも期待が高まり、そして前作が比較対象にされてしまうのもなんなのですが、やはり「ダークナイトであれだけ見せてくれたんだから、今回もそれなりのもん見せてくれるだろう」と思っちゃうのは人情です。
まあ、「ダークナイト」は置いといても、「インセプション」は観る者を引き付ける強いプロットがない。
ここからはちょっとネタパレもあるので、まだ鑑賞していない人は注意。
ただ、なかなか複雑な作品なので、これくらいの情報はかえって事前に持っていても差し支えないとは思う。
ディカプリオ演じる主人公、コブのプロットは2つあって、元妻との過去の清算(トラウマの克服)と、犯罪者という立場上、国に帰ることができず、子供たちと会うことができないという状況を打破する、というもの。
インセプションの任務は、成功すれば報酬として「子供たちと生活する」という状況を手に入れられる。
だからコブが任務にひたむきになるのは理解できるが、観客はコブと子供たちの絆を感じ取れないままストーリーが進むので、このインセプションの成功の是非に大きな期待を寄せられない。
観客の多くは、「インセプションは成功するのか? 成功したら、なにが起きるのか?」という単純なサスペンスに興味を抱く。
ところが、この作品では、インセプションが成功したことによる変化は描かれず、単に渡辺 謙の計らいによって、コブは子供たちと再会できるにすぎない。
プロットがクリアになっているので、これで問題ないはずなのだが、このプロットには観客はあまり興味を持っていないので、終わったあとに「あれ?」となる。
これは作品の全体の構造のせいだと思う。
特に冒頭の渡辺 謙とのシークエンスがあるため、観客は「そういう映画だ」と思う。
「そういう映画」というのは、いわばサスペンスであり、SFアクションであり、夢の中を旅するミステリなのだ、ということ。
作中では、パラドックスについて触れるシークエンスがいくつかあるが、どん欲な観客の中にはそのパラドックス体験をさせてくれるものと期待する者もいるかも知れない。しかし、パラドックスに関しては、お遊び要素で終わる。
渡辺 謙の演じるサイトーは、冒頭で意味深に扱われるので、とても重要な人物なのだと観客は思いながらストーリーを追うが、実は(サスペンス的には)まったく重要ではなく、最後に肩すかしを食らうことになる。
コブの元妻とのトラウマの清算は、結局は自分と向き合うということなのだが、虚無に落ちたサイトーがこれについてもっと一役買うかというと、そうでもなかったりする。
とにかく、コブが劇中、あまりにも容易に(これはコブに限ったことではないが)夢の中へ行き来し、ほとんど夢の中で行動し、発言するために、現実におけるコブのプロットがどうでもよくなってしまうのだ。
子供たちとのプロットも、ほとんど夢の中で幻想的かつ抽象的、記号的に描かれるのみで、現実世界では一度電話するだけである。
話が戻るが、「インセプションが成功した場合の、現実世界での変化」をできれば描くべきだったろう。
最後の空港で、インセプションされた人物(ロバート)が、なにか一言、コブに言うだけでもいい。
コブが自分のおこなったインセプションによって、変化した人間と現実世界で向き合うというシーンを、ノーランはなぜ作らなかったのだろう?
コブがロバートに植え付けたのは、「過去の清算(父との和解)」と「自分の道を自分で切り拓く」である。
これを転じて、たとえば「結果的にコブは、自分をインセプションしていたのだ」というくらいまで持って来れたら、上級のサスペンスになれたと思うのにな〜....。
それくらいのパンチがあったあとに、子供たちとの生活が待っているなら、僕らは拍手しただろう。
ただ、映像的にはすごかったですけどね〜っw
ところで、上映前の予告編で、ちょっと気になる作品があった。
「ソーシャル・ネットワーキング」という作品。
これはFacebookを開発した一人の学生の話で、実話をもとにしている。
このFacebookを開発したことによって、彼はとんでもない境遇へと巻き込まれていく。
しかもその主人公を演じるのが、あの「ゾンビランド」のジェシー・アンゼンバーグとあっては、観ないわけにはいかないw
彼はいい俳優だ。
さて、我が愛しの「ゾンビランド」ですが、ゾンビ映画としては北米での興行成績が史上最高になってしまいましたw
いろんな賞にもノミネートされ、いくつかは受賞しています。
ほんとに面白いので、是非劇場で鑑賞してみてください!
「インセプション」はDVDでOK。
でぁでぁ。