2012年08月25日
スパイ・ゲーム
スパイ・ゲーム
監督 : トニー・スコット
出演 : ロバート・レッドフォード ブラッド・ピット
Huluで鑑賞。
19日に亡くなったトニー・スコット監督を偲んで。
トニー・スコット作品の中では未見のひとつだったので、Huluのマイリストに入れていた。なにを観ようかほとほと迷った時のための切り札の一枚のつもりで、ずいぶん我慢して取っておいた一枚だった。
トニー・スコットおなじみの(というよりかはスコット兄弟の、とも言える)ダニエル・ミンデルの撮影で、始終「いい絵」に彩られた作品。いきなり"銀のこし"から始まります。
ブラッド・ピットといえば、特に若いころは若き日のロバート・レッドフォードにクリソツなため、この二人の「リバー・ランズ・スルー・イット」での共演時には奇妙な感覚を覚えたもんですが、今回の共演ではさすがに大人なブラッド・ピット。対等の男になってきてます。
CIA局員のミュアー(ロバート・レッドフォード)は、退職を迎えたその日、かつて自分が育てた工作員、ビショップ(ブラッド・ピット)が、スパイ容疑で中国に逮捕されたことを知らされる。
アメリカは中国との通商交渉を目前としていたため、このビショップを見放そうするが、ミュアーはビショップを助けるために行動を起こす。
「行動を起こす」と言っても、ミュアーは明日の朝で完全に退職。そしてビショップが処刑されるのも明日の朝、というタイムリミットが迫る。
また、ミュアーはビショップを最も知る局員として作戦会議室に呼ばれ、証言を記録され続ける。
リアルタイムなストーリー軸はほとんどこの会議室で進行し、ミュアーの回想的証言でビショップとのストーリーが展開されるというスタイル。
そんな中、ミュアーはどうやってビショップを助けるのか??
お見事な作品でした。
最後まで引き込まれました。なかなかのサスペンス作品に仕上がっています。
まあ、これくらいのシナリオじゃないと、ロバート・レッドフォードも呼べんでしょう。
ミュアー役にロバート・レッドフォードを持ってきたのも結果的によかったですね。
このミュアー役は、トニー・スコットならジーン・ハックマンとか持ってきても良さそうな感じなんですが、これ絶対に初期キャスティング候補にはなっていたと思いますねw ジーン・ハックマンをあてがうのはかなり「あり」な役なので、もしそうなったとしても成功していたでしょう。
でもそうすると「またジーン・ハックマンか」になっちゃうので、どうしようかというところにロバート・レッドフォードを持ってきた。これによって、この作品のテイストが決まったと思うなあ。
ジーン・ハックマンは明らかに「なんかやりそうなタヌキ」ぶりが垣間見れてしまうのですが、ロバート・レッドフォードは清潔感ある「無害そう」な男。汗をかかずになにかを成し遂げる、的な。
その魅力がラスト、涼やかにポルシェで疾走するミュアーの絵で頂点を迎えます。
ミュアーが戦うのは、「ビショップを見捨てようとしている」CIAそのもので、協力していると見せかけながらも裏をかくといった心理戦的な「スパイ・ゲーム」が見どころ。
作品の60%以上は、回想シーンであり、ミュアーとビショップの出会い、師弟関係、そしてCIAの工作活動を通した絆と、すれ違いによる別れが描かれています。
かつてベイルートでの作戦中、ビショップはミュアーの誕生日にスキットルを贈ります。スキットルとは、携帯用の酒を入れる容器ですね。中東はまず酒が禁忌なので、「どうやってこんなものを手に入れた?」とミュアーはひどく驚きます。
それを手に入れるための作戦名を「ディナーアウト作戦」と呼んでいたビショップ。
そしてその作戦名が、また最後の最後に二人をつなぎます。
なかなかどうして爽快な作品です。
ここにきて、ちょっとした「スティング」・・・というのは言い過ぎですが、ロバート・レッドフォードだけになにかそんな彷彿感がよぎります。
そしてなにより、トニー・スコットならではの作品です。これほどの情報量を持つ内容を、テンポよく音楽的にまとめていく手腕。
本当に惜しい人を亡くしました。
この作品のラストに、亡き母「エリザベス・ジェーン・スコットに捧ぐ」と銘打たれます。
しかし、68歳にして自ら命を絶ってしまったトニー・スコット監督。どんな事情があったのかわかりませんが、いまごろお母さんのところで叱られているかも知れませんね。