2012年07月26日

リーサル・ウェポン

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リーサル・ウェポン

監督 : リチャード・ドナー
出演 : メル・ギブソン  ダニー・グローヴァー

80年代を青春として過ごした男性で、この作品を鑑賞したことがあるならば、たぶんその多くはこの映画をあまり悪く言ったりはしないだろう。

後に「ダイ・ハード」や「マトリックス」を手がけるジョエル・シルバーが製作したこのヒット作品は、ある意味ハリウッドにおける刑事アクション映画の転換期的作品となっている。

ちなみにこの作品、僕は100回以上は観ている。
「アホですか」と言われてしまいそうだが、そう、アホだったのだ。今日の鑑賞で何回目になるのだろう。

なにがどう転換期的かというと、それは大雑把に言えばアメリカの古典的な刑事アクションから、現代的な刑事アクションへの移行、というものだ。この翌年の「ダイ・ハード」で一気にそれが加速する。

この作品はいわゆる「バディもの」で、遺伝子的にはTVシリーズ「スタスキー&ハッチ」や「マイアミ・バイス」を受け継いでいる。「スタスキー&ハッチ」のゴキゲンな要素と、「マイアミ・バイス」の硬派さが融合された感じだ。

メル・ギブソン演じる主人公のマーティン・リッグスは、僕が最も好きな刑事キャラクター。
まずこのリッグスが、今までの刑事映画にはない要素を持っていた。題名にもなっている「リーサル・ウェポン(必殺兵器)」であるということ。

「捜査する刑事」ではなく、「戦う刑事」というキャラクター性を確立したのはクリント・イーストウッドの「ダーティ・ハリー」で、その後にやはりそれを目指して製作された、スタローンの「コブラ」などがある。しかし「コブラ」はシリーズ化実現はならなかった。

その後にもポツポツと刑事アクションはあったのだが、この「リーサル・ウェポン」は主人公に「元特殊部隊隊員」というのを持ってきて、戦闘力を上乗せしたことによって今までにない火力の増す演出をやってみせた。

刑事にベレッタ(M92FS)というダブルカラム(多弾数)拳銃を持たせて、派手に撃ちまくらせてみせるというスタイルは当時、「こんなの見たことない」だったのだ。
さらにはリッグスは、H&K PSG1ライフルを持ちだして、狙撃まで行う。

間違いなく「最強の刑事」であって、「リーサル・ウェポン」。これに対抗する犯罪者側は、ただのギャングでは役不足ということで、やはり元特殊部隊の男が受けて立つ。

この作品は「第5弾」まで企画されるほどの人気シリーズとなるが(実際に製作されたのは4まで)、それはやはりこのリッグスの魅力と、ダニー・グローヴァー演ずる黒人刑事、ロジャーとの絶妙なコンビっぷりが成功しているからだろう。

リッグスの魅力はいろいろあるが、まずその「バイタリティ」。これがなにより他の刑事アクションと違っていて、このバイタリティは後の刑事アクションものに受け継がれていく。

たとえば、車を奪って逃げ去る犯人。刑事、それに向かって銃を放つ。バンパーに弾く銃弾、割れるガラス。しかし犯人の車は遠ざかっていく・・・こういうシーンはよくあるが、この場合これまでの刑事ものは、「son of a bich!」などと吐いて見送るか、まあよくて他の車を探して奪って追いかける → カーチェイス といった具合だ。

しかしリッグスはいきなりそのまま足で走って追いかけるのである。この展開は当時、「まじかよ?」だった。これほんとに。
まじでこういう発想はなかったのだ。当時つきあってた女の子も、観終わってから「あの走って追いかけるとこがすごかった」と言ったのをよく覚えている。リッグスは高速道路のバイパスを使って先回りし、犯人の車にMP5の銃弾を浴びせる。

この映画は、刑事モノにお約束のカーチェイスがない、というのも特徴で、あえてそれを避けている。リッグスという「人間兵器」が肝だからで、彼が身一つで戦っていく様を信条としている。走って、飛んで、登って降りて、伏せて転がり掴んで回し、ひねって押さえて撃ちまくる、ってな具合でござい。

最後の最後に、わざわざ格闘技戦に持っていっているのもそのコンセプトからだろう。


リッグスが強い理由は、単に技術やバイタリティがあるからだけではなく、「自殺願望のある男」だからというのもある。死ぬことを恐れないというのは時として最大の武器だ。
彼は交通事故で妻をなくしており、自暴自棄になっている。警察のカウンセリングにかかっており、「異常者」もしくは「年金ねらいの芝居」などとさえ見られている。

この映画のサブ・プロットは、「自殺願望のある自分の変革」であり、リッグスが犯罪との戦いの中、ロジャーとの交流を通してそれを成し遂げ、一人の男として再起する話なのだ。

コンビを組んだ時、リッグスとロジャーはあまり反りが合わない。ここまではまあ、よくあるノリだが、その後の相互理解への道筋は、折り重なるアクションによって作られていく。そしてなによりも、ロジャーの家族が接着剤の役目を果たす。

この作品の隠れたテーマは「家族」であり、独り身のリッグスが最後、クリスマスの夜をロジャーの家族と過ごすことを選択してラストを迎える、というかたちになっている。
このアメリカ人好みの「家族」というテーマは、その後のシリーズでもきっちり機能し、このシリーズを支えてきた。


とにかく、この作品移行、刑事アクションにおける主人公はバイタリティが増し、戦いにおいて柔軟になり、容赦のない奇抜な行動も辞さなくなってきた。そういう意味でも、記念すべき一作だ。

もし観たことないなどいう野郎がいたら、是非経験すべし。少なくもパート2までは押さえよう!


100回超えて見ても発見のある映画でございます。




posted by ORICHALCON at 05:44| Comment(2) | TrackBack(0) | Cinema